帰省した。

アラームの音で起床した、朝の9時。
7時間くらいしか眠れなかった。

遠方の実家に帰るために、朝から羽田空港へ向かう必要があった。
起床後、すぐに支度をして10時過ぎには家を出て、羽田空港行きのシャトルバスに乗り込んだ。

普段から羽田空港へはシャトルバスで向かうようにしている。
大荷物を抱えて電車で立つよりも快適な気がするからだ。
しかし今日は渋滞にハマってしまい、予定よりも30分も遅く羽田空港に着いた。
渋滞にハマりながら1時間半もバスに揺られるのと、電車に1時間乗るのと、どっちが楽だったのか少し悩んだ。

羽田空港につき、手荷物検査を終え、機内に乗り込んだ。
機内で左隣の席に座っているおじいさんが、ちょっと臭かった。
最初は、ちょっと臭いな程度だった。別にこのくらいでは何とも思わない。

そんなことを気にせずに僕は「正義とケアの現代哲学」を読み始めた。正義マスターにちょっとずつ近づくために。

離陸から少し経つと、おじいさんの様子がちょっとおかしかった。
僕は本を読むのをやめて、おじいさんの方をチラッと見た。
おじいさんは、腕毛をぶちぶちと抜いて、床に毛をふりかけていた。
腕毛をぶちぶち抜いて、抜いた毛を宙に置く、何度も何度も繰り返していた。
目障り かつ 不潔。最悪だった。

僕は気を取り直して本を読むことを再開した。
機内サービスのドリンクの配布が始まった。
CAさんが横に立ち止まり、何を飲むか聞いてくれた。
おじいさんが「リンゴジュース!」と言いながら、右手を僕の目の前に出す。
その右手は、ありえないくらい震えていた。嫌な予感しかしなかった。
CAさんがおじいさんの右手にリンゴジュースを受けわたす。
大きく揺れるコップに、僕とCAさんは目が釘付けになった。
膝の上に置いていた本に目をやると、シミが2つできていた。
おじいさんを殴ってもいい正義が欲しかった。

そんなこともありながら、無事に(僕の本は無事ではないが)空港に着陸して、母親に出迎えられた。
その後車で1時間かけて、実家に帰宅することができた。
やはり実家はとても良い。どこか安心するし、何より住環境がとても良い。
家は広いし、ご飯は美味しいし、周りは自然に溢れていて、空気が美味しい。
地元に仕事と友人と娯楽があればずっと住んでいたいけれど、ないのでそれはできない。

両親にはあと何回会えるだろうか。出来るだけたくさん会いに帰りたいなーなどと思った。

暇だ

暇だ。

留年したため、大学は週に3日、少し講義に出るだけだ。
残りの週4日は、まるまる空いている。
空いているが、することがない。
というか、したいことがない。意欲が全くない。

暇だと碌なことを考えない。大学に通う意味だとか、生きる意味だとか、将来だとかについて考えてしまう。
考えたって意味がとても薄いことだ。

たまに友人と会うことだけが唯一の楽しみだ。
意欲がなく、時間が余っていると、人と会うだけが楽しみになる。
老人の気持ちが少しわかった。

もう一つ楽しみがあった。それは病院に行くことだ。
検査を受けられて、人と話せて、なんか楽しい。
これもまた老人のようだ。

こうやって生活を書き出すと、まるで抑うつ状態のような気がしてくる。
興味や喜びの喪失、気力の減退、絶望感や無価値感、全てに当てはまる。
iPhoneのヘルスケアアプリでうつ病リスクの質問表に答えたら、中程度だった。

暇は精神に良くない、と締め括ろうとしていたのだけれど、抑うつ症状の可能性が出てきてしまった。
先生に相談しよう。症状が改善したら、暇も楽しめるのかもしれない。